「げんかい」395号・今月のアルバム拝見 ~隈本明氏の桜はがき~

2003.6.1発行

終戦後、連合軍の占領下の郵政では、戦前から使用されていた軍国主義が伺われる郵便切手やはがきの図案改定が急がれた。又、インフレーションに伴う郵便料金の改定もあり、昭和20年から23年にかけて郵便切手は、1,2,3次の新昭和切手が発行され、はがきも桜,稲穂、旧議事堂と発行された。

桜はがきは、当初料金改定を予定していた昭和21年7月1日に、はがき15銭として発行予定でしたが、料金改定の時期が定まらず、一方、楠公はがきも放置 できず旧料金のまま桜5銭はがきが昭和21年7月20日発行されました。
郵便料金は、同年7月25日封書30銭・はがき15銭に改定されたので、単独使用期間5日間と、もっとも短いはがきであります。(このはがきの単独使用済 はさくらカタログ値25,000円です。)
5銭桜はがきは用紙により、軍票再生紙・灰白粗紙・薄手白紙の3種に分類されますが、全て印刷局製造説が有力であります。(文献では印刷局・共同印刷・文 寿堂製造説あります。)
15銭桜はがきは、昭和21年8月25日に発行され、色調は、5銭のうす赤茶に比べ紅色が強く、印刷局のポッター輪転機により印刷されたものは、インクの 汚れが転写され分類する場合の目安になるほどであります。
15銭はがきの分類は、先ず、印刷所毎に5タイブに分類し、印刷機械・用紙・紙目により仕分けると、15種類程度に分類されます。

タイプ 印刷所 印刷機 用紙 紙目 備考
タイプ 1 印刷局 ポッター 輪転機 灰白紙
再生粗紙 縦目紙
フンメル輪転機 再生粗紙 横目紙
タイプ 2 文寿堂 (株) 薄手白紙 縦目紙
横目紙
厚手白紙
タイ プ 3 トキワ印刷(株) 再生粗紙 縦目紙のみ
タイプ 4 共同印刷 (株) 薄手粗紙 縦目紙 (赤褐色・灰青色)
縦裏紙 (赤褐色・灰青色)
横目紙 (赤褐色・灰青色)
タイブ 5 北海道開 発(株) 漉き斑点のある 縦目紙
黄色粗紙 横目紙

桜はがきの実逓便については、15銭桜が料金改定から、1ヶ月遅れの昭和21年8月25日に発行され、昭和22年4月1日には 再び封書2円、はがき50銭に料金改定が行なわれたため、単独使用期間が短く、普通切手の加貼り使用例が多く見受けられます。2次新昭和の数字切手 35 銭・45銭の発行など見れば、桜はがきは、終戦後の混乱期が生んだ暫定はがきであると申せます。

(参考文献 郵趣研究19941秋号)